「松茸コストパフォーマンス比較」

(10/27/2001 Review)

スポーツの秋、読書の秋、そしてなにより食欲の秋がやってきた。豊富な旬の食材の出回る日本を思い出しては小さなため息をつくこの季節に、日本にいないからこそ贅沢に味わえる和の味わいがある。秋食材の王「松茸」だ。

ここ数週間ばかり、宇和島屋の一角には日本に流通しているカナダ産に近い白い松茸が並べられており、手にとって匂いを嗅ぐ人も多い。しかし実際に値札を見ると、下は$14.99/lbから上は$49.99/lbまでさまざまでどれを手にするべきか思わず迷う。

そこで各々のコストパフォーマンスを比較するために、今回はもっとも高い$49.99/lbの松茸と、最安値に近い$24.99/lbを3種類の食べ方で比較してみることにした。

これが、単価最高値$49.99/lbの松茸。カサが開いておらず、色の明るい物がよいというのが定説なので、小ぶりの形の良いのを選んだ。

生の状態ではあまり香りはしないが、見た目は松茸らしい形をしている。この時点で、10点満点で「見栄え」は私が8点・妻8点、「香り」は私が3点・妻7点をつけた。
 

こちらが単価$24.99/lbの松茸。おおぶりでどれもカサが開ききっており、一番大きなものはカサの周りがギザギザになっていた。見栄えからすると松茸らしさはまったく感じられず、カサが大きい分汚れも目立っている。

カサが開いているせいか、この状態ですでに香りが強く食欲をそそる。「見栄え」は私2点・妻6点、「香り」は私5点・妻7点。
 

松茸はまず汚れとぬめりを取り、いしづきを鉛筆のように斜めに削って水分をよくふき取る。少し時間を置いて扇風機などで乾燥させるレシピもあるが、今回は割愛した。

また今回はコストパフォーマンス比較ということなので、松茸の使用量については若干偏りがある(安いほうを少しふんだんに使用した)ことを付け加えておく。
 

まずは一番シンプルな焼き松茸から。小ぶりの松茸は裂いた瞬間の身のみずみずしさがすばらしく、香りは物足りないものの品の良く、身の旨みが口に広がる。歯ごたえも良い。(「見栄え」6:7・「香り」5:8・「味」8:9・「歯ごたえ」9:7)

比べて大ぶりのものは歯ごたえが今ひとつで、香りはあるもののかなり飛んでしまっておりやや下品。身の旨みも今ひとつ感じられない。(見3:8・香5:8・味5:8・歯4:7)

続いて土瓶蒸し。昆布とカツオで一番だしをとり、具は松茸のみ。小ぶりのものはやはり見栄えが良く、スープに漂う香りも弱いが品が良い。(見8:8・香7:8・味8:8・歯9:7)

大ぶりのものはカサが開いた分見栄えが悪く、スープがにごる。香りは小ぶりに比べて強いが、やはりやや下品。すだち等の柑橘類をいれると気にならなくなるようだ。(見2:7・香6:9・味6:5・歯5:4)

最後は松茸ご飯。ここでも小ぶりの見栄えが映えるかと思いきや、混ざってしまうと意外に見栄えは気にならない。今回は炊き分けたわけではないので香りや味については違いがわからないものの、大ぶりの松茸の歯ごたえも予想外に良く美味しくいただけた。

また醤油なども香るためか、微妙で上品な香りよりもはっきりと強く香ってくれるほうが食べたときにわかりやすく、鼻から抜けるため息に松茸の香りを 感じると本当に幸せな気分になれた。(同点)

総評

総得点でみると、小ぶり146点・大ぶり112点。特に差がついたのが総合的な見栄え(45対28)と土瓶蒸しの味(16対11)、焼き松茸の歯ごたえ(16対11)だ。見栄えに関してはもとより明らかであることを考慮して、ここでは「みてくれを我慢さえすれば、単価の安い松茸を買うほうが良いか」という点について考察する。土瓶蒸しの歯ごたえ(16対9)は私見ではあるが重要ではないと思われるので、ここでは評価ポイントからはずした。

焼き松茸においては重要なポイントである「歯ごたえ」に大きく差がある上に、シメジには一歩譲るといわれる「味」でも差がついている。香りは同点ではあるが、強さと質がそれぞれ異なっており、質においては小ぶりのものが大きく勝っている。焼き松茸にするのであれば、迷わず単価が高くても質がいいものを選ぶことをお勧めする。

土瓶蒸しについては、最重要ポイントの「香り」には思ったよりも差がない。もっともここでも香りの質と強さには違いがありそれが「味」の評価に結びついてはいるものの、スダチ・ユズの柑橘類の添加でかなり改善(ごまかしとも言えるが)できる。土瓶蒸しでは、質に差はでるものの単価の安い松茸も一考の価値ありと言えるだろう。

松茸ご飯では、炊き分けをしなかったこともあり両者同点となった。見栄えがあまり気にならない点や、醤油を加えることによる香りの強さの重要性 、値段によらない歯ごたえの良さなどからコストパフォーマンスを考えて、松茸ご飯を作るなら単価の安い松茸をお勧めする。同じ金額で、より具沢山で香り高い松茸ご飯が楽しめるだろう。

もちろん余裕がある方は、どれを作るにしても質の良い松茸をたっぷり使えばそれだけ満足できる。シアトルエリアの短い秋を満喫するために、財布と相談しながらできるだけ楽しむのが一番だろう。

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